Smiley face
写真・図版
愛知・名古屋アジア大会の閉会式で打ち上げられた花火

この社説のポイント

●32年ぶりに国内で開催した夏季アジア大会は魅力を再認識させた一方で、課題も浮き彫りに
●日本は競泳で17歳の高校生が世界新を出し、ルーツのないセパタクローでも頂点に
●運営は混乱が目立ち、大会規模の適正化や大会の過密化解消など課題も山積みだ

 夏季大会は32年ぶりの国内開催となったアジア大会は、地域のスポーツの祭典の魅力と意義を再認識させた。その一方で運営の混乱や、開催を巡る課題も浮かび上がった。

 競技では若い選手の活躍が目立った。象徴的なのは競泳男子200メートル平泳ぎの大橋信選手だ。17歳の高校生は8月のパンパシフィック大会出場やコロナ感染の影響もみせず、世界記録で優勝した。

写真・図版
競泳の男子200メートル平泳ぎ決勝で世界記録を更新して優勝し、観客の声援に応える大橋信選手

 タイやインドネシアなどで盛んな伝統競技セパタクローの日本優勝も関心を集めた。広く根付いた歴史も教本もない中、映像を活用した独自の分析と強化で頂点に立った。

準備と調整不足が目についた混乱

 それだけに、選手を支えるはずの運営で混乱が続いたことは残念だった。クルーズ船やコンテナ型施設を使った分散宿泊は、長時間の手続きなどで批判を浴びた。選手輸送の乱れも目立ち、バスケット男子の韓国は決勝当日にスケジュール変更を強いられた。競技場では国歌の取り違えや国旗掲揚のミスもあった。

 概して準備、調整不足の印象が拭えない。国内のスポーツ大会は、東京五輪での汚職や談合事件の反省から、電通や博報堂など広告大手に丸投げしてきた従来の慣習から脱皮途上にある。しかし、その過程で得た経験や学びが十分共有されていないなら、もったいない。18日からのアジアパラ競技大会の運営も、同じ組織委員会が担う。アジア大会の教訓を生かして欲しい。

写真・図版
車いすラグビーはアジアパラ大会でも=2024年9月のパリ・パラリンピックでの日本―豪州戦

 運営の混乱は大会の肥大化とも無縁ではない。競技の数は五輪を上回る。多彩な競技はアジアの独自色を守る上で重要だが、同一競技内の種目を減らすなど、大会全体の適正規模は考える必要がある。同時に、冬季五輪やサッカーW杯で広がる多国間共催も選択肢だろう。一部の大国だけでなく、中規模の国々も開ける骨格を考えていくべきだ。

 国際大会の過密も、気になる。競泳以外にもバレーボールやバスケットは五輪やワールドカップ出場をかけた別の大会が直前にあり、アジア大会は若手中心のチームもあった。「アジア一を競う」看板が薄まる印象は否めない。

アジアをまとめ、魅力的に

 主催者のアジア・オリンピック評議会(OCA)は、次回から五輪前年への移行を検討中だ。五輪予選を兼ねる競技を増やしトップ選手の参加増を狙うが、各競技団体にとって自ら主催する大会は収入源でもある。大会の乱立で選手の負担が過剰にならぬよう慎重な設計が必要だ。

 政治的な対立も珍しくない広いアジアをまとめ、曲がり角にある大会を安定させ、魅力的にする。そんな指導力がOCAに求められている。

  • 相次いだトラブル、アジア大会が閉幕 原因は不慣れ?想定外?

「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。

共有