谷崎潤一郎、三島由紀夫、松本清張、今年、直木賞を受賞した万城目学さん――。この有名作家たちに共通することとは? 奈良を舞台やテーマにした作品を書いたということです。
その奈良の知る人ぞ知る歴史などについて、いま朝日新聞に文章をつづってくれているのが、直木賞作家の門井慶喜さん。今回は、誰もが知るあの文豪と奈良の関わりについて、紹介してくれました。
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大正5(1916)年4月、森鷗外は退官し、予備役に編入された。
最後の肩書は陸軍軍医総監、陸軍省医務局長だった。これでようやくお役所づとめに別れを告げ、気楽な閑人(かんじん)になれるぞと思う日もあったのではないか。
ところが翌年ふたたび下命を受けた。こんどは帝室博物館総長兼図書頭(ずしょのかみ)だから、前とまったく異なるポスト。固く辞退したとしてももはや不敬にも不義理にもならないはずだが、しかし鷗外がこの話をあっさり受けたように見えるのは、55歳、まだまだ体力に自信があったのか。それとも小さな子供がいたから生計面での何かを考えたか。
ともあれ、鷗外の「第二の人…

