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 法律の専門家が都市部に偏在し、地方の住民が司法サービスを受けづらくなる「司法過疎」の問題は、東京都内でも生じている。12月初旬、NPO法人「司法過疎サポートネットワーク」(新宿区)が離島で開いた法律・税金相談会に記者が同行。メンバーと島内を巡りながら、課題を考えた。

  • 【連載】ひっそり閉じた法律事務所 相談あっても弁護士いない、過疎地の現実

 港区の竹芝埠頭(ふとう)から夜行フェリーで8時間の伊豆大島(大島町)。レンタカーで走りながら、土地家屋調査士の石井健太さん(56)=文京区=がつぶやいた。「土地がすっかり山にのまれてるな」

 住宅地から一本外れた道に入ると、アスファルトの上に大量の枝葉が散乱していた。踏み越えるたびに、車体がぐらりと揺れる。150メートルほど進むと、生い茂る木々に行く手を阻まれた。地図によると、この先にも道が続き、数軒の建物があるはずだ。

 車から降りた石井さんが説明してくれた。

 「このあたりは別荘地として開発され、そのまま放棄された土地なんです」

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島内の荒廃した土地を案内する土地家屋調査士の石井健太さん=2025年12月6日、東京都大島町、上保晃平撮影

 1964年、デビュー直後の都はるみさんが島娘の悲恋を歌った「アンコ椿(つばき)は恋の花」がミリオンヒットを記録した。歌の舞台となった伊豆大島は新婚旅行先としてにぎわい、別荘地開発に沸いた。

 石井さんに案内された周辺の土地の登記簿を調べると、75年ごろに山林が分筆され、本土に住所がある人物に所有権が移っていた。分筆時の測量図には、登記の申請人として「●●観光株式会社」と書かれていた。

 石井さんは約15年前から、島内の未登記の不動産を測量し、法務局に届け出る仕事を担ってきた。島民が亡くなって相続が生じる時や、民泊を始める際に登記が必要となり、依頼されることが多いという。

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観光スポットの「裏砂漠」で測量機器を使う土地家屋調査士の石井健太さん=2025年12月6日、東京都大島町、上保晃平撮影

 人口6600人の伊豆大島には、司法書士や行政書士、税理士、土地家屋調査士がそれぞれ数人程度いるが、常駐する弁護士はいない。

 石井さんは「法律の専門家が少ないからか、島内では登記の必要性やメリットがあまり理解されていない」と語る。司法過疎地域では、特に管理不全の土地が多いと感じるという。

 「おやじが買った土地が山にのまれて、どこだかわかんない」。そんな相談が寄せられると石井さんは、GNSS(全地球航法衛星システム)を用いた測量機器を手に、埋もれた土地の境界標を捜し歩く。「登記は国家の根幹。登記が滞って相続や譲渡ができなければ、島の活力にも関わるでしょう」と話す。

 石井さんは、過疎地の土地を有効活用していくため、土地家屋調査士の役割が一層重要になると考えている。

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島内で測量機器を使う土地家屋調査士の石井健太さん=2025年12月6日、東京都大島町、上保晃平撮影

 石井さんが所属するNPO法人「司法過疎サポートネットワーク」では、2001年から東京の島嶼(とうしょ)部などを巡回し、無料の法律・税金相談会を開いてきた。

 これまでに受けた相談は約2500件。島々で過疎化が進む中、「子どもは本土で生活していて、不動産の処分に困っている」といった相続や遺言、税金などに関する相談が増えているという。

アシタバ農家に民宿経営者・・・相談は続々と

 記者が同行した今回の相談会は伊豆大島で40回目の開催となった。町役場併設の開発総合センターに、土地家屋調査士の石井さんのほか、弁護士や司法書士、税理士の計7人が集まった。公証役場の公証人も同席した。

 5時間で計6件の相談が寄せられた。島特産の青菜「アシタバ」の農家、駒村晃司さん(34)は町の広報誌で開催を知り、土地を譲り受ける手順を司法書士や税理士に尋ねた。購入する場合と贈与を受ける場合で、手続きやかかる税金が異なることがわかったという。「アシタバを作る農地を広げたい。さっそく地主と相談する」

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司法過疎サポートネットワークの法律・税金相談会に参加した首藤規恵税理士(左)=2025年12月5日、東京都大島町、上保晃平撮影

 母親から民宿を継いだ60代女性は、固定資産税について相談した。町役場の担当課に問い合わせた足で来たといい、「島内の1カ所だけで困りごとを解決できた。本当に有意義でありがたい」と話した。遺産相続について聞いた70代男性も「インターネットで相談できると言われてもわからない。こういう対面がいいんですよ」と笑顔をみせた。

 NPOメンバーで税理士の首藤(しゅどう)規恵さん=横浜市=は「相談会には他の士業の人たちもそろっていて心強い。観光も楽しんで、すっかり島好きになった」と語る。東日本大震災の被災地に出張し、「必要な情報が届いていない」と痛感した経験がある。知人の紹介で、3年前からNPOの活動に参加しているという。

 首藤さんは「島民にとっては、コミュニティーの外にいる士業だからこそ相談できることもあると思う。多くの方に利用してもらいたい」と話す。

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