裏金事件で自民党は党勢低迷にあえいでいるが、党内から表立って「岸田おろし」の声は上がらない。かといって、事件を受けた政治改革に向けた議論にも熱気がなく、党会合には静寂が広がる。なぜこうも熱を欠くのか。国会議員の実態をデータに基づき描いた「日本の国会議員」(中公新書)の著者である大阪大の濱本真輔教授=現代日本政治=に聞いた。
――かつての自民では、かんかんがくがくの議論が繰り広げられた場面もあったようですが、今は全くうかがえません。
「自民党内の沈黙は段階的に進んできた。長期的に見ると、1994年の衆院への小選挙区制導入で議員、また派閥が自立性を弱めていった。衆院選の候補者を選ぶ公認権を握る党執行部の権限が強化されたが、議員側が執行部を突き上げることは結構あった。しかし、その権限が次第に明示的に使われるようになった。例えば、不人気だった森喜朗内閣を倒閣しようとした2000年の『加藤の乱』では野中広務幹事長が主導して乱を鎮圧した。その後の05年の小泉純一郎首相による『郵政解散』では、郵政民営化に反対する議員に刺客を送って、執行部の権限の強さが裏打ちされた」
「データで見ると、『麻生おろし』などのようなメディアを通じた執行部批判は、自民が政権に復帰することになる12年以降は、ほぼない。09年の野党転落、またその後の民主党政権の瓦解(がかい)のプロセスを見ていて、自民党内には『党内対立はマイナス』という感覚が強く残った」
「一方、慶応大の奥健太郎教授とともに、自民の政務調査会の活動量も結党から測っているが、会議の量自体は落ちていない。議論の密度はまた別の観点だが、きちんと評価されるべき点もある」
――自民はかつて、野党に転落した敗因の一つに、党内抗争があったと分析しました。
「『執行部や党に対する批判…

