
この社説のポイント
●ブラジルの左派ルラ大統領が決選投票で勝利し通算4期目へ。右派は議会で勢力拡大
●敗れたフラビオ氏は米国へ。強権政治への警戒が勝利を後押ししたが分断は根深い
●与野党は融和と暮らしの改善に努め、米中に偏らない自主外交を進めるべきだ
歴史的な逆転勝利である。だが、選挙に勝っても国民の分断が解消されたわけではない。民主主義を守り、暮らしの不安に応える政治を実行できるか。真価が問われるのはこれからだ。
ブラジルの大統領選決選投票で、左派の現職ルラ氏が右派のフラビオ・ボルソナーロ上院議員を破り、通算4期目の当選を決めた。得票率は51・79%対48・21%。約440万票差だった。
第1回投票ではフラビオ氏が約220万票上回った。そこからの逆転は、1989年に大統領直接選挙が復活して以来初めてだ。
背景には、フラビオ氏の父、ジャイル・ボルソナーロ前大統領の強権政治への警戒があろう。軍政を肯定し、司法と対立。選挙での敗北を覆そうとしたクーデター計画で有罪判決を受けた。長男は父親への恩赦を掲げた。
一方、ルラ氏は借金の減免や低所得者への給付拡充を訴え、SNSを駆使して若者への働きかけを強めた。
しかし、勝利を全面的な信任と受け止めてはならない。
ルラ政権下で貧困や失業は減ったが、物価高や高金利が家計を圧迫する。活発化する犯罪組織や汚職疑惑への不信・不安も根強い。フラビオ氏は治安強化や歳出削減を掲げ、不満をすくい上げた。
ルラ氏の4期目は厳しい船出となる。上下両院で勢力を伸ばした右派とも粘り強く合意を探り、暮らしや治安の改善に取り組むべきだ。膨らむ公的債務を抑えつつ、給付の拡充をどう実現するかも問われる。
一方、フラビオ氏は選挙の公正さに疑義を唱え、結果の無効を求める意向を示した。その後、ブラジルを出国して米国に逃亡した。国内で対話を尽くして分断を乗り越える努力に背を向ける動きであり、残念だ。
外交でも試練が待つ。ルラ氏は9月の国連総会で「ブラジルは誰の裏庭でもない」と訴え、外国による選挙への干渉を批判した。トランプ米政権が中南米への影響力を強めるなか、主権と民主主義を守る姿勢を貫いてほしい。
中国も貿易や投資を通じて中南米で存在感を増している。米中の覇権争いに巻き込まれず、欧州や日本とも連携する自主外交を貫くべきだ。民主国家として法に基づく国際秩序を支え、アマゾンの森林保護や気候変動対策にも責任を果たしてほしい。
日本とブラジルは日系移民の歴史を通じて深い縁があり、食料や資源、投資でも結びつく。民主主義と国際協調を支える連携を深めたい。
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