港で取材をしていると、ドボンと大きな音がした。海面から人の頭が浮いている。高齢の男性だ。「大丈夫ですか!」と記者が近づいて大声で呼びかけるが、返事はない。どうしよう。オタオタしていると、浮輪が投げ込まれた。
20日午前8時半過ぎ、広島県呉市豊町の久比(くび)港でのことだ。岸壁から海面まで2メートルほどの高さがあった。
浮輪を投げ込んだのは、港に入っていた船の船長三村英喜さん(41)。船に備え付けたロープ付きの浮輪で「おじいちゃん、腕をかけて」と言うと、水深の浅い場所までロープを引っ張った。騒ぎを聞きつけた近所の人がはしごを持ってきた。三村さんは迷うことなく、はしごを下り、海につかりながら、高齢男性を押し上げ、集まった人たちが引き上げた。
男性は電動カーに乗っていて、岸壁から誤って海に転落したとみられる。駆けつけた救急隊が確認したが、男性は擦り傷一つなかったという。
三村さんは介護福祉士の資格を持ち、老人ホームで働いたことがあった。「経験が生きた。今は落水事故は常に頭の中で想定しているので、対応できた」とホッとした表情を見せた。救急隊員は「発見と救出が早くて良かった」と三村さんらの対応をたたえた。









