
「琉球の人々の死をもって、本土の日本人の生をあがなう」
共産党機関紙・人民日報系の環球時報は今年1月、沖縄戦や米軍基地問題を取り上げた連載記事でこう記した。
沖縄の人々がいかに負担を強いられてきたかを強調し、沖縄が抱える問題を足がかりに、日本政府の安全保障政策を批判した。さらに、記者の肩書を「琉球特派記者」とした。
【連載】解読・中国のナラティブ 対日強硬の現場から
大国となった中国が独自の主張を繰り出し、国際的にも押し通そうという行動が目立ちます。こうしたナラティブ(言説)はなぜ生まれ、何を起こすのか。日中関係の緊張で振りかざす論理を読み解きます。
環球時報は、6月に北京で開いたシンポジウムの記事でも「中国と琉球(日本名『沖縄』)から専門家が集まった」などと、「琉球」という呼称を強調している。
昨年11月の高市早苗首相による台湾有事発言以降、中国メディアでは沖縄関連の記事が増え、「琉球」を押し出す傾向も強まっている。底流には、「沖縄の地位はいまだ未定」という考えがある。

繰り返される「沖縄地位未定論」
注目を集めたのは、2013年5月8日付の人民日報の論考記事だ。前年9月に日本政府が尖閣諸島(中国名・釣魚島)を国有化し、中国側で対日批判が続いていた。
当時、論考を書いた研究者らは、尖閣諸島は「中国に帰属する」と強調したうえで、「歴史的に未解決である琉球問題も、再び議論できる」と牽制(けんせい)した。
彼らの理屈はこうだ。
1879年に琉球王国を解体…
