
この社説のポイント
●日本銀行が、消費者物価の水準について、一時的な要因を除く基調でみても、目標とする2%と「おおむね整合的」と判断した
●物価高が賃上げに先行し、家計に負担がかかっている。十分な賃上げの継続が必要
●インフレ局面入りを踏まえ、政府も実態に即した経済政策への転換が急務だ
日本銀行が、消費者物価の水準について、政府の補助金など一時的な要因を除く基調でみても、目標とする2%と「おおむね整合的」と判断した。政府・日銀にとっては13年越しの到達だ。1990年代からの「物価は上がらないのが当たり前」という経済状況をほぼ脱したことを示し、望ましい流れといえる。
ただ、国民の多くは「2%到達」と言われてもピンとこないだろう。日銀が重視する基調的な物価と異なり、実際の物価はエネルギーの高騰などで、4年前から総じて2%を超えて推移するからだ。
日銀の政策運営は今後、物価の押し上げから、上振れを抑え込んで2%の定着を図る局面に移る。10月は政策金利を据え置いたが、後手に回らぬよう、まずは景気を刺激も抑制もしない「中立金利」への利上げを進めるべきだ。
日銀の2%物価安定目標は、第2次安倍晋三政権の発足直後の2013年1月に導入され、政府との共同声明にうたわれた。黒田東彦(はるひこ)前総裁が始めた大規模緩和は11年に及んだが、それだけでは物価上昇は長続きしなかった。
本格的な上昇の起点になったのは、コロナ禍からの回復やロシアのウクライナ侵略を契機とする海外発のエネルギー高だった。そのため、物価高が賃上げに先行し、家計に大きな負担がかかった。「2%到達」の意義を国民の多くが実感するには、企業が十分な賃上げを続け、賃金が物価高を上回って増える状況を定着させる必要がある。
「物価は上がるのが当たり前」という意識への変化をとらえて高付加価値の商品を生み出し、成長につなげる企業の努力も重要になる。
際立つ政府側の立ち遅れ
政府・日銀の共同声明は、日銀にはデフレ脱却に向けた金融緩和の推進を、政府には、日本経済の成長力強化と持続可能な財政構造の確立への取り組みを求めた。13年経って物価は目標に到達したが、潜在成長率は0.5%程度に沈み、政府の財政状況は先進国で最悪の水準だ。政府側の立ち遅れが際立つ。

高市早苗政権は370兆円超の官民投資を打ち出し、物価高対策として食料品の消費減税を推し進める。投資拡大による供給力の強化は必要だとしても、人手不足が続く下で、財政投入や減税による需要の刺激を重ねれば、物価を上振れさせかねない。家計の負担はかえって増す。
高市首相は国会答弁で、財政拡張と金融緩和を進める「リフレ政策」について必要性を否定した。インフレ局面に入った経済の実態に即し、政策自体の転換が急務だ。
- 日銀、物価上昇率「2%到達」の見解 13年の目標導入以降で初めて
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