
「めまいがする」と伝えても、医師には「そんなはずがない」と取り合ってもらえなかった――。哲学者の三木那由他さん=写真=が経験したことです。つらさや痛み、悲しみを語っても「大げさ」「感情的だ」などと否定的に受け止められる背景に何があるのでしょうか。三木さんは連載「ことばをほどく」最新回で、社会における声や主張の聞かれやすさには、その人のジェンダーやマイノリティー性によって偏りや差が生じるのではないか、と問います。
偏りの典型例として挙げられるのが「ジェンダー・ペイン・ギャップ」です。統計的に、女性は男性よりも痛みを経験することが多いにもかかわらず、医療の現場では男性と比べその痛みを真面目に受け取ってもらいにくいとされます。
この偏りを見いだす枠組みが「一人称権威」という哲学の概念です。ある種の事柄についてはそれを経験している本人の報告が他者の意見よりも優先される、というものです。三木さんはマンガなどを例に引きながら、この概念とアイデンティティーとの関係についても論じます。
三木さんが言葉とコミュニケーションの哲学を通じて、生きづらさのある人に届けてきたこの連載が、9月に「私を語るための言葉」(講談社)として本になりました。刊行を記念し、三木さんと、ルーツやアイデンティティーを探求する作家の温又柔さんとの対談イベントを10月25日に開催しました。
多数派の社会規範に偏りがちな社会を問い直し、自分を語る言葉を見つけるには。対談の模様はRe:Ronでも紹介する予定です。連載では今後も、言葉をほどいて考え、社会に問い続けます。
- 私の痛みは「大げさ」ですか 女性や少数者が直面する見えない偏見
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