
この社説のポイント
・日本将棋連盟の新規定で西山朋佳女流四冠が棋士になる。女性の棋士の増加の出発点に
・女流棋戦との両立など予想される課題について、連盟には環境を整備する責任がある
・棋界に女性の参入を想定していない制度や慣習がないか、見直す機会に
将棋の西山朋佳女流四冠が女性として初めて「棋士」の資格を得ることになった。この機会を、女性の棋士が珍しくない未来へのスタート地点として大切に生かしたい。
通常、棋士になるには養成機関「奨励会」で三段まで昇段し、半年かけたリーグ戦で上位2人に入る必要がある。西山さんは好成績を挙げたがわずかに及ばず、2021年、女性のみの資格である「女流棋士」に転向した。
日本将棋連盟は25年6月、女流最高タイトル「白玲」を通算5期獲得した女流棋士に棋士の資格を認める新規定を制定。今年10月、西山さんは資格獲得の条件を満たした。
新規定には、棋士を目指す女性の後押しや、棋界を盛り上げるという意義がある。ただ、西山さんが、目前に突如作られた棋士への新ルートを歩むか否かは、本人の意向が尊重される必要があり、その選択が注目されていた。
棋士になると表明した会見での、晴れやかな表情と言葉からは、納得いく選択ができたようにうかがえた。女流棋士たちが積み重ねた歴史の上に立っている重みや、子どもたちのモデルケースになることへの自覚も口にした。
悪循環断つ突破口に
棋士を目指す女の子が少なく、奨励会入会が極端に少ない。母数の少なさと孤立しやすい環境から、棋士が生まれない。ロールモデルがいないから志望者が増えない。女性の棋士が出なかった一因にこうした悪循環もあるだろう。
棋士になるに足る強さがあると証明する方法は、西山さんも過去受けた「編入試験」など徐々に広がってきた。女性だけのルートは不公平との批判もある。しかし、将棋の勝負の公正性は揺るがさず、強さの証明方法を多元化することには、悪循環を断つ突破口として、一定の理がある。
連盟には、起きる課題を先読みし、活動環境を整える責任がある。まずは女流棋戦と棋士としての対局の両立だ。日程が過密になれば、体調不良や、実力が出せない事態も起きうる。今後昇級し、対局の多い順位戦に参加できるようになればなおさらだ。西山さんは、連盟が対局数に関わる制度を検討するとしたことも選択を後押ししたと語る。

福間香奈女流四冠が24年、妊娠のためタイトル戦の日程変更を連盟に申し入れたものの、一部は変更がかなわず不戦敗になったことも重い教訓だ。後に福間さんは「タイトルか出産か」を選ばざるを得ない現状に問題提起をした。
棋士の世界に、女性の参入を想定していない制度や慣習はないか。後に続く人のためにも、この機に見直したい。
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