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「外来生物」 挿絵・福田美蘭 現代社会をイメージした作品を毎月掲載します

■論壇時評 政治学者・谷口将紀

 台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁を機に、日中関係は緊張を強めている。折しも今月の論壇には、高市発言以前に準備されたと思われるものも含め、中国の政治経済や日中関係を扱った論考が多く見られた。

 習近平体制の強さをめぐっては「外交」の中国特集に寄稿した専門家の間でも見方が分かれた。

停滞か盤石か 中国の政治経済に二つの見方

 益尾知佐子は、中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議閉幕直後のコミュニケに、国民生活に直接影響する伝統産業を重視し、実体経済の活力回復を優先すべきだとする、習路線とは異なる見解が併記された点に注目する。そこから導かれるのは、習はかつてほど絶対的な存在ではなくなったという示唆に富む観測である(❶)。

 経済面では津上俊哉が冷徹な分析を提示する(❷)。中国財政が短期的に破綻(はたん)する可能性は低いとしながらも、不動産バブル崩壊後、投資に失敗した地方政府や企業の財務が悪化し、中長期的な停滞は避けられないと論じる。中国のGDP(国内総生産)が米国を抜く日は来ないという指摘は重要である。

 一方、鈴木隆は川島真との対談で、こうした見方に異議を唱える(❸)。社会や地方に反発はあるものの、共産党と軍を掌中に収めた習の権力基盤は揺るがず、経済不振も天安門事件当時のように政治腐敗や統治エリートの分裂と結び付いておらず、直ちに体制を不安定化させる可能性は低いという。

谷口将紀さんによる月1回の「論壇時評」第9回。中国の政治経済や日中関係の今後をどう見るか。専門家のさまざまな視点を紹介しながら論じます。後半では、日米関係を含めた日本の外交戦略を考えます。手がかりは「真実」と「信頼」です。

 日中関係については、前駐中大使の垂(たるみ)秀夫は、高市発言は首相の国会答弁としては失言としつつも、これを撤回して中国に「日本は押せば屈する」という認識を再生産させてはならないと説く。いま求められるのは、極端な中国依存を減らすサプライチェーン再編、危機時に迅速に対応できる在留邦人・企業の安全確保の仕組みづくり、米中接近に備えたASEAN(東南アジア諸国連合)や欧州、インド、オーストラリアなどとの連携強化といった課題の着実な遂行だという(❹)。中国を知り抜いた著者らしい冷静で均衡の取れた見立てである。

 現代中国政治論の李昊(りこう)が示す処方箋(せん)は、高市政権の安定化である(❺)。両国関係が緊張する中で靖国神社参拝に踏み切れば壊滅的打撃になりかねないと警鐘を鳴らし、第2次安倍政権と同様に高市政権が長期化すれば、中国は落としどころを探ってくると読む。

台湾有事めぐる高市発言 より慎重な統治者の余裕を

 日本政治外交史の北岡伸一も、高市がはっきり鋭く物を言う点を評価しながら、相手に揚げ足を取られないよう台湾有事をめぐる発言はより慎重であるべきだったとする。さらに、立憲民主党左派と見られてきた枝野幸男が平和安全法制に「違憲の部分はない」と述べるなど、安全保障政策をめぐる国内対立が縮小している基盤を踏まえ、統合者としての余裕がほしいとも注文を付ける(❻)。外交には100対0の勝利が望めず、目前の局面だけでなく数手先を読み、布石を打つのが基本である。そうした戦略的思考を、高市首相はもちろん与野党の政治家がどこまで備えているのか。

 この方程式を一層複雑にして…

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