
難病を抱えるシングルマザーと闘病を支える高校生の息子が、すれ違いながらも思い合って生きようとする映画「90メートル」が3月27日、公開されました。母の介護を続けるべきか、その義務から解かれて自分の人生を生きていいのか――。そんな悩みに揺れる息子には、中川駿監督自身の姿が投影されているといいます。「自分ごと」の物語として、ケアラーが抱える葛藤にどう向き合ったか、聞きました。
中川駿監督インタビュー
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――息子がヤングケアラーとして母を支える作品の監督・脚本を務めたのは。
元々、ヤングケアラーというテーマありきだったわけではありません。母と息子の物語を撮りたいと思っていた時、あるドキュメンタリー作品に出会いました。
「90メートル」と同じく、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した母親と、ケアをする高校生の息子の話でした。母と息子が互いに思い合うものの、不器用でもある様子が、僕と母に重なって他人事と思えず、何度も観ました。
ドキュメンタリーの中で、ケアマネジャーが、母を気にする息子に言います。「家にいないといけない状況をなくすのが私たちの仕事です」。自分の人生を歩んでいい、と言われても後ろ髪を引かれる思い、それがヤングケアラーの課題の核心ではないか――。そう気づいて、介護の義務から解き放たれたヤングケアラーが人生の選択に葛藤する話を思いつきました。

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――耳が聞こえない親を持つ、聞こえる子ども「コーダ」を描いた映画「コーダ あいのうた」(2021年公開、アカデミー賞作品賞など受賞)は、家を出たい主人公を一度は家族が引き留めようとする場面もあります。
「コーダ あいのうた」はとてもいい映画ですが、親子関係がしっくりこないというか、自分事に感じられずにいました。自分と母に置き換えた時、たぶん母は気にせず出て行ってと言い、僕は本当に出て行っていいだろうかと悩むだろうなと思ったんです。
■介護していた母に言えなかったこと
――「90メートル」では、2人の主人公、息子の佑(山時聡真)と母・美咲(菅野美穂)は、佑が大学進学で家を出たいと思っても母に言えずにいる。美咲は「私は大丈夫」と言いながらも、言いようのない寂しさを抱えます。佑は、母の言葉が「本心ではないのでは」と葛藤する描写がありますね。
病の当事者がケアラーに気に…



